「第4回かつしか文学賞に寄せて」 酒本歩
「かつしか文学賞に応募したことが、私に作家デビューの道を開いてくれました。かつしか文学賞は大きなチャンスだと思います。」
作家の酒本歩先生は、第3回かつしか文学賞の優秀賞受賞者です。優秀賞を受賞後、第11回島田荘司選 ばらのまち福山ミステリー文学新人賞を受賞され、受賞作の『幻の彼女』(「さよならをもう一度」改題)(光文社)以降も数々の作品を発表されています。
酒本歩先生より小説を楽しく書くためのアドバイスを頂きました。
☆酒本歩へ ~楽しく書くことが小説家になるための才能~
「数年前の酒本さんに、小説の書き方をアドバイスするつもりで、書いてください」
区のご担当の方にそう言われました。
当時私は、三十年勤めた会社をリタイアして、子どもの頃からの夢だった小説家に挑戦していました。
ずいぶんと試行錯誤しましたし、回り道もしたと思います。
幸運にも第3回『かつしか文学賞』優秀賞をいただき、モチベーションを上げた私はその翌年、第11回 『島田荘司選 ばらのまち福山ミステリー文学新人賞』を受賞することになります。そして今月、受賞作『幻の彼女』が全国で発売されます。
確かに今ならかつての迷い悩んでいた哀れな(笑)酒本歩に、何かしらアドバイスできるような気がします。
☆楽しく書くことが小説家になるための才能
小説を書くのに特別な才能はいらない。書いていて楽しいと思えたら、それが小説を書く才能だ。
いきなり、波瀾万丈、奇想天外な大長編など書こうとしても、PCの前で固まってしまうだけ。
楽しく書こう。鼻歌交じりで書けば時間を忘れる。夢中になって書いた文章は、躍動感があって、読む人を明るく愉快な気分にさせる。
それでは【楽しく書くためのヒント】を三つ。
(1)楽しく書くためには その一
どんなものでも完成するとうれしいもの。達成感はモチベーションを上げてくれる。だから、小説も最初から長編なんか書こうとしなくていい。十枚でも二十枚でもいいから、ラストまで書いてみること。最後のページに〈了〉と書いたら、ちょっと良いお酒を買って、乾杯しよう。
(2)楽しく書くためには その二
登場人物には、俳優や芸人をキャスティングする。監督になったみたいでちょっと気分がいい。人気絶頂の俳優でも、売り出し中のイケメンでも、誰にオファーするかは自由。気に入っている有名人であるほど、小説の中での表情や口調や行動など、簡単にイメージできる。すると筆が進む。
(3)楽しく書くためには その三
何を書けばいいのか、そこで迷う時間がもったいない。素晴らしいストーリーなんか、そうそう浮かぶわけがない。初めは借り物からはじめよう。
ドラマや映画、小説で大好きなシーン、感動したシーンを書きだしてみる。それを二つ組み合わせる。たとえば『101回目のプロポーズ』の、「僕は死にましぇ~ん」の名シーンを、武田鉄矢ではなくて、「ボヘミアン・ラプソディ」のフレディにやらせたらどうなるのだろう。
どんな場面設定になるのか、フレディの恋人は誰か、フレディはなんと叫ぶのか、それとも歌い出すのか……。
自由に想像の羽を広げよう。そのとき、自分だけの新しいストーリーが生まれる。
さて、いろいろ書いてしまいました。
当時の酒本へのメッセージなので、みなさんに当てはまるかはわかりませんが、「書いてみようかな」と思う人の参考になればうれしいです。
葛飾区には、「かつしか文学賞」があります。地元の人には、とても応募しやすいです。この賞に応募したことが、私に作家デビューの道を開いてくれました。
「かつしか文学賞」は大きなチャンスだと思います。
酒本歩
『幻の彼女』(光文社)について
かつしか文学賞の担当者として拝読させていただきました。
主人公は葛飾区在住で、区内の描写もあり一区民としても楽しめました。
酒本歩先生ご自身が述べられていたとおり、“読者思い”の読みやすい文章が、次の展開をとにかく知りたくなるストーリーと相まって一気に読み終わりました。読後感は「前代未聞、必涙のラスト!!」そのとおりです。二度読みました。二読目は、伏線の描写が切ないです。
葛飾区民としても酒本歩先生の今後の活躍を期待せずにはいられません。(かつしか文学賞担当者)
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